職種・業界に特化したマーケットデータの活用方法 「企画・管理職」編
▼ 2023年7月11日に公開した記事です ▼
採用をスムーズに進めるためにマーケットデータを活用した求人の要件定義・求人票作成は重要です。
今回はマーケットデータを簡単に検索できる「HR forecaster (エイチアール フォーキャスター)」を活用して、「企画・管理職」人材の採用を行う方法を、パーソルキャリアHR forecasterサービス企画の斎と企画・管理職系の求人を専門の担当が説明します。
要件定義の重要性
要件定義とデータ活用の重要性
中途採用を成功させるために、「求人の要件定義 = 採用ターゲットの明確化」がポイントとなります。
要件定義を実施することで、以下のようなメリットがでてきます。
・ターゲットの妥当性の確認ができる
・関係者間での共通理解がしやすくなる
・採用施策を具体化できる
しかしながら、経験則だけ要件定義を行うことは困難であり、マーケットデータの活用が大きなポイントになります。
マーケットデータを活用することで3つの効果が得られると考えられます。
・論理的に妥当性を確認できる
・合意形成の根拠になる
・PDCAが回せる、ネクストアクションでどうすれば良いかが分かる
改めてマーケットデータを活用することで、効果的な採用活動ができるようになります。
要件定義・採用施策を考える際のポイント
冒頭、要件定義の重要性とデータを利用する重要性について説明させていただきました。
ここで要件定義と採用施策を考える際のポイントですが、次の4点があります。
このうち、以下のデータについては、「HR forecaster」で取得が可能です。
・年収
・ターゲット人数
・競合状況
しかしながら、「候補者の志向性」については提供していません。
そこで、今回のテーマとなる「企画・管理系の志向性」についての志向性や求人の動向について説明していきます。
なお、今から提示するデータはパーソルキャリアの調査部門による結果です。
企画・管理職経験のある求職者の志向性
企画・管理職の志向性
「企画・管理」の転職理由の上位は前年度と内容に大きく変化がありません。
しかし、「市場価値を上げたい」や「倒産/リストラ/契約期間の満了」などの転職理由が順位を上げており、コロナ禍の影響など外圧的要因を受けやすい職種であることが伺えます。
経理・財務の動向
■ 登録者の動向
登録者数は減少傾向にあります。IPO業務改善やマネジメントなど、難易度の高い業務に挑戦できる環境を求める転職希望者もいるが、全体的に見ると腰を据えて着実にスキルを積んでいきたいと考える安定志向の方が多いことも要因と考えられます。
■ 求人の動向
求人数は増加傾向にあります。
各社のニーズは、事業会社の決算業務やマネジメントの経験のある中堅・リーダー層や、若手のポテンシャル層に集中しており、この層は採用競争が激化している状況です。
■ まとめ
売り手市場の中でいかに自社にFITする候補者様と巡り会うかは下記がポイントです。
①転職市場の状況に合わせた適切な要件定義
②応募者のニーズに沿った情報提供
③Web面接などを導入した短期集中型選考
マーケティング・広報の動向
■ 登録者の動向
35歳以下の登録比率は約64%、依然として若手~ミドル層が過半数を占めています。
景況変化の不安は感じつつも「今よりも良い、安心できる環境」への転職欲求が引き続き高い状況です。
■ 求人の動向
オフラインのマーケティング手法だけでなく、オンライン手法の検討やD2Cの広がりから、自社サイトにおけるWebマーケティング、データ分析経験者などデジタル人材の求人数は依然として多いです。
■ まとめ
転職希望者の働き方に対する考え方・価値観の変化は顕著で、それに対してポジティブな対応・変革をしている会社なのかを見定める転職希望者が増加しています。
オンラインを活用した選考や柔軟な働き方の訴求など、他社と差別化をすることで、人材の確保に努めていくことが重要となってきております。(リモートワークや時差出勤・フレックスタイム制度など。)
また、経験者採用・ポテンシャル採用など対象者に合わせた細かいフォローアップや訴求点の変更などの微調整も必須です。
企画職(経営企画・事業企画・営業企画・商品サービス企画)の動向
■ 登録者の動向
総合職として他部署を経験した後に企画職に配属されるケースがほとんどのため、年齢層はやや高めとなり、36歳以上の登録者が全体の約44%を占めています。
■ 求人の動向
コロナ禍を追い風に、ECやSaaSを中心としたインターネットサービスの企業は引き続き採用熱度が高い状態です。
また、コンサルティングファームや代理店を中心に、これまで止めていた若手優秀層の採用を再開する企業も増えつつあります。
■ まとめ
「キャリアアップ」「事業・サービスに共感できるか」を重視する転職希望者が多いため、母集団形成の段階から具体的な業務内容/事業・サービスの理解度を高めることが重要です。
また、コロナ禍の影響などにより、40代以上の転職希望者も増加しており、入社後に携わるプロジェクト、将来のキャリアプランが曖昧な求人への応募を避ける傾向が強くなっています。
ケーススタディによる「HR forecaster」のデータの読み解き方
HR forecasterでのデータの読み解き方についてみていきましょう。実際に、数字を見ながらどういった施策をとるべきかケーススタディの中で説明していきます。
なお、ここからは弊社久保田からの補足や対話をしながらご説明をさせて頂きます。
ケーススタディ①:オファー年収が候補者の平均年収と乖離している
このケースでの重要なポイントは、「平均年収」となります。
候補者現年収の平均とオファー年収の差が161万円と出ており、大きな乖離が生まれている状況です。給与が全てではないですが、母集団形成が難しくなるケースが多く、改善が必要な点となってきます。
打ち手としては3点ほど考えられます。
①年収UP
②ターゲットの変更
③現状維持で他の優位性を創出する
■ 企画・管理職担当
マーケット状況と提示年収の乖離というのは、企業内でとても多く発生しております。
企画・管理系の人材は、事業活動に直結するポジションかつ、ピンポイントでの採用になるため要望が高くなりがちです。
そこで、乖離が起きた場合は、現場担当者様に採用の背景を聞いていきます。「なぜ人材が欲しいのか」と併せて、「なぜそのスキルが必要なのか」を詳しく伺っていきます。
その中で、自社提示年収(ここでは500万円)に合うスキルや候補者像と市況感に合う(ここでは660万円)のスキル&候補者像をお伝えした上で、判断を仰いでいきます。
年収を上げるかターゲットを変更するかは企業によってきますが、現場の意向も大きく関わるため、現場を交えて話しをしつつ進め方を話し合うと良いでしょう。
HR forecasterの「競合案件の提示年収」などのデータを見ながらエージェントと相談して提示年収を決定したり、自社内で検討をする場合でも、マーケット情報を加味したターゲット・採用方針を立ることが最重要です。
ケーススタディ②条件を満たす候補者数が少ない&採用決定までの平均日数の表示がない
このケースでの注目ポイントは、「採用決定までの平均日数」と「条件を満たす候補数」です。
「採用決定までの平均日数」が表示されていない場合、サンプル数10件以下となり、弊社としても支援が中々できていないターゲットとなるため、難易度がかなり高いという状況です。
そのため、この場合も
①ターゲットの変更
②現状維持で他の優位性を創出する
③採用チャネルの拡大
といった打ち手を考えていきます。
■ 企画・管理職担当
残念ながら、候補者数が少ない場合の打ち手は上記以外の方法では無いと言えるでしょう。
企画管理系の職種では、事業へのインパクトを考えて、どうしても要件緩和をできないケースも多いです。
具体的には、専門知識が必須であったり、退職者が役職クラスである場合などです。
そういったケースでは人材紹介側だけでは支援できないこともあるため、DR(ダイレクトリクルーティング)をお勧めすることもあります。
また、企業側がDRありきで最初から採用を考えているケースもあります。
ハイレイヤーの方々に向けては、昔からDRやスカウトメールをうつというのはありましたが、その流れは加速しているといえるでしょう。
ケーススタディ③競合する他社求人数が多い
データの「競合する他社求人数」がポイントとなり、競合数が極端に多いことがボトルネックとなっているケースです。
即戦力を採用するのが難しいため要件を下げてしまった場合などに起こりえます。
この場合、競合数が多いため、他の案件に埋もれてしまいます。
打ち手としては、
①年収UP
②現状維持で他の優位性を創出する
③認知度の向上
④個別スカウトの実施
といったことが考えられます。
■ 企画・管理職担当
未経年・微経験者採用のほとんどの場合、経験をそこまで求めないが増員していきたいというケースが多いのではないかと思いますが、競合の求人が多ければ多いほど、採用したい方の具体化をしていくのがおすすめです。
それにより、他の会社との優位性が変わってきて、ターゲットへ向けたメッセージを追加することができますので、大量の案件に埋もれないためにできることの一つと言えます。
ただ、未経験者を企画職系で採用する場合、具体化が意外と難しいのが現実です。
そういった場合には、仕事内容や活躍している方の専門的なスキルではなく、汎用性のあるスキルを明確化していくのがいいと思います。
「こういう人が向いている」と漠然と伝えるのではなく、具体的にどのような方が活躍しているのか、というところから必要スキルについて因数分解していくイメージです。
■ 斎
ー求人票に盛り込むと募集を集められる情報はありますか?
■ 企画・管理職担当
まずは応募したいと思える求人にするという点でいうと、昨今、働き方に関してはほとんどの求人票に記載があるため、「記載がない」ということは避けるべきです。
また、未経験や経験が浅い人に向けては、入社後にどのようなスキル・経験が積めるのかという、キャリアパスやステップアップについては記載するのがおすすめです。
さらに、紹介する側としても働き方についての記載がない求人は紹介しづらい場合があります。(候補者様から質問が出るポイントでもあるため。)
■ 斎
ー企画職系のキャリアパスを提示しづらいというお悩みもありそうですが、その場合はどうすれば良いでしょうか?
■ 企画・管理職担当
悩まれる企業は多くいらっしゃいます。
その場合は、過去に他の部門に異動したパターンや部門自体の業務内容を伺い、入社後の具体的な仕事内容と弊社が把握している他社データと比較し強みを伝えたりしています。
要件を明確にするのと同様に、キャリアパスについても、自社の事例を掲載してイメージを膨らませるのがポイントです。
そうすることで、応募者数の増加につながり、入社後も齟齬がないといった状況を作りだせます。
本日のまとめ
最後に、マーケットデータはコンパスと同じです。
要件定義や求人票をしっかり作成して、エージェントとも連携したにも関わらず採用がうまくいかなかった場合は、データを根拠にすることで現状の確認や何を変更したらいいのかの修正がしやすくなります。
今までなんとなくイメージで採用していたところから、データをもとに調べてから募集を開始することで、他の企業とも差をつけやすくなるのではないでしょうか。