職種・業界に特化したマーケットデータの活用方法 「ITエンジニア インフラエンジニア職」編
▼ 2023年9月7日に公開した記事です ▼
採用をスムーズに進めるためにマーケットデータを活用した求人の要件定義・求人票作成は重要です。
今回はマーケットデータを簡単に検索できる「HR forecaster (エイチアール フォーキャスター)」を活用して、「ITエンジニアインフラエンジニア」人材の採用を行う方法を、パーソルキャリアHR forecasterサービス企画の斎が説明します。
要件定義の重要性
要件定義とデータ活用の重要性
中途採用を成功させるために、「求人の要件定義 = 採用ターゲットの明確化」がポイントとなります。
要件定義を実施することで、以下のようなメリットがでてきます。
・ターゲットの妥当性の確認ができる
・関係者間での共通理解がしやすくなる
・採用施策を具体化できる
しかしながら、経験則だけ要件定義を行うことは困難であり、マーケットデータの活用が大きなポイントになります。
マーケットデータを活用することで3つの効果が得られると考えられます。
・論理的に妥当性を確認できる
・合意形成の根拠になる
・PDCAが回せる、ネクストアクションでどうすれば良いかが分かる
改めてマーケットデータを活用することで、効果的な採用活動ができるようになります。
要件定義・採用施策を考える際のポイント
冒頭、要件定義の重要性とデータを利用する重要性について説明させていただきました。
ここで要件定義と採用施策を考える際のポイントですが、次の4点があります。
このうち、以下のデータについては、「HR forecaster」で取得が可能です。
・年収
・ターゲット人数
・競合状況
しかしながら、「候補者の志向性」については提供していません。
そこで、今回のテーマとなる「インラフエンジニア職」を含めた「ITエンジニア」についての志向性や求人の動向について説明していきます。
なお、今から提示するデータはパーソルキャリアの調査部門による結果です。
ITエンジニア経験のある求職者の志向性
ITエンジニアの志向性
「ITエンジニア」の転職理由1位は「ほかにやりたい仕事がある」で、前年度から変化はありませんでした。
しかし、「専門知識・技術を習得したい」が1.8pt増加し13.2%で2位となり、新しい技術習得のために転職活動をする人が増えました。
新型コロナウイルスの影響もあり、候補者がスキルを身につけなくてはいけないと感じたことが順位変動の理由として考えられます。
また、採用を成功させるには、「何ができるか」だけではなく、「誰と働くのか」「どうやって働くか」をアピールできるかがポイントです。
「上流工程」「自社開発比率が高い」「自分の経験と開発環境の親和性」は引き続きアピールすべきポイントとなりますが、働き方改革の流れを受け、「働きやすさ」を重視する転職希望者が増加している傾向があります。
「どのような社風なのか」「どのような人と働けるのか」を重視する転職希望者も多くなっており、リモートワークの有無、出社は週に何回すればいいのか、どういった人々と働くのかなど、業務内容だけではなくコミュニケーション方法や教育方法についてなどのアピール・訴求も採用成功のカギとなっています。
さらに細かく職種ごとに見ていきます。
サーバーエンジニアの採用動向
■ 登録者の動向
登録者数は7月において一旦減少しましたが、それ以外の期間は上昇を見せており、長いスパンでみると上昇傾向となっています。
インフラ系の中でも、サーバエンジニアの登録者はネットワーク/データベースエンジニアと比較すると多い傾向も変わっていません。
■ 求人の動向
企業側の動きをみてみると2021年6月~8月の求人数は2021年3月~5月対比113%と引き続き増加しています。基本的に毎月右肩上がりの傾向です。
特に設計構築などの上流工程に関わった経験を求める求人が増えています。
また、運用保守経験者の採用を強化する企業も増えており、すべてにおいて増加傾向です。
■ まとめ
こうした中で、自社保有の案件を詳細に把握し、技術に関して語れる準備を行うことが採用成功への第一歩となるでしょう。
世の中のIT人材のニーズが高まる一方で、今の会社より条件や環境が改善されるのであれば転職する、という温度感の転職希望者が目立ちます。
転職後、具体的にどんな業務に関わり、どんな待遇になるのか、現職から環境を移すことでのキャリアアップや自分の市場価値はどうなるのか、ということを求人票や面接で明確に提示することポイントとなります。
ネットワークエンジニアの動向
■ 登録者の動向
2021年6月~8月の登録者数は2021年3月~5月対比91%へ減少となっていますが、30歳以下の若手層の比率が高まっています。
新型コロナウイルスが与える現職への影響や、自社の今後の収益、自分の将来性などを鑑み、漠然とした不安から登録を行う方が増えているようです。
■ 求人の動向
求人動向は2021年6月~8月の求人数は2021年3月~5月対比114%と増加傾向です。
新型コロナウイルスの影響を受け、中途採用を停止、または縮小していた企業の採用活動が再開したことによる影響も考えられます。
さらに、上記期間中も採用を継続していた大手SES各社が、未経験・微経験への採用熱度を高めていることも要因として挙げられます。
■ まとめ
案件内容や技術など魅力訴求を行っている企業に応募が集まっています。
特に、ネットワークエンジニアは、「最新技術」「大規模」「グローバル」といった案件に関われることを理由に転職を行うことが多く、そこは依然として変わりません。
ただし、優秀層ほど「クラウド」「IoT」「セキュリティ」といった最新技術との連携や、インフラ系職種内での横断的なキャリアパスを希望するケースが多いため、技術やキャリアに関することを訴求することも大事です。
ケーススタディによるHR forecasterのデータの読み解き方
HR forecasterでのデータの読み解き方についてみていきましょう。実際に、数字を見ながらどういった施策をとるべきかケーススタディの中で説明していきます。
ケーススタディ①:オファー年収が候補者の平均年収と乖離している&競合他社が多い
インフラのエンジニア3年で、設計構築で調べた際の「HR forecaster」の診断結果です。
このケースでの1つめのボトルネックとなるポイントは、「平均年収」となります。設定したオファーの年収と平均年収に100万円近い乖離が見られます。
給与が全てではありませんが、一定の候補者が気にするポイントであるため、現在の年収から下がりすぎると応募につながらない状況になります。
2つめのポイントは、「競合する他社求人数」です。
1,400社近い競合が存在しており候補者にアプローチするのも厳しい状況のため、他の求人に勝る優位性を作らないかぎり、他の求人に埋もれてしまう可能性が高くなります。
そういった中で数値から見える打ち手として3点あげています。
①年収UP
②ターゲットの変更
③現状維持で他の優位性を創出する
「年収UP」は企業によってできる範囲が限られてくると考えていますが、どこまで年収をあげればいいのかに関しては、担当営業から提示できる「競合案系の提示年収」を活用しながら、提示したい年収と全体のマーケットの中でのポジションングを確認していただくとよいでしょう。
「ターゲットの変更」に関しては即戦力がほしいという現場からの強い要望があるパターンが多いかと思います。
実際提示できる年収に要件を合わせていくのか、それともターゲットを優先していくのかについては常に判断が必要となるところです。
たとえば、経験年数を減らすのかまたは年収をあげるのか、採用まで時間がかかってもいいので条件を変更しないのか、といった点について現場と話す必要があるでしょう。
「現状維持で他の優位性を創出する」という方法もあります。
採用フローの短縮や求人票の刷新がそれにあたり、自社の技術やキャリアパス、風土などについてまだ求人票に記載されていない場合は、求人票の刷新をしてから「年収UP」「ターゲットの変更」を検討していく、候補者が気にするポイントである採用フローの短縮をまず行うというのもおすすめです。
ケーススタディ②:条件を満たす候補者数が少ない
この場合は、「条件を満たす候補者数」がボトルネックとなります。
「条件を満たす候補者数」が約70人しかいない候補者を300社近い企業が採用活動をしているため、かなり厳しい状況です。
そのため、打ち手としては以下が考えられます。
1.ターゲットの変更
2.現状維持で他の優位性を創出する
3.採用チャネルの拡大
「ターゲットの変更」「現状維持で他の優位性を創出する」については先ほど説明したので割愛します。
「採用チャネルの拡大」についてですが、高レイヤーの方を採用したい場合、人材紹介だけだと時間が掛かってしまい、なかなか上手くいかないケースがあります。
攻めの採用と言われるダイレクト・リクルーティングや広告など様々なチャネルを活用しながら、ターゲット変更、優位性の創出に注力することをおすすめします。
とはいえ、高レイヤーの方を採用したいという要望の裏には、即戦力でないと採用できないという現場の考えもあると思います。
そのため、ターゲットの変更がかなり難しいというパターンが多いのも事実です。
そういった場合には、ターゲットになる人数を、詳細なデータとともに現場に提示することをおすすめしています。
※詳細データはHR forecasterの「dodaエージェントへ相談」というボタンを押していただくことで、担当営業から提供ができます。
そうすることによって、スキルは妥協できないものの希望年齢を少し下げるまたは上げるというようにターゲットを広げることが可能となります。
ケーススタディ③競合する他社求人数が多い
ここで注目していただきたいのが「競合する他社求人数」です。
未経験募集や第二新卒募集の際にはよく見られる状況ですが、大手の企業も未経験採用を行う場合は、会社の規模上位数社に応募が集中してしまうことが多くあります。
4,000社近くの企業が採用を進めていても採用がうまくいっているのは上位数社ということがほとんどです。
この場合の打ち手として次の4点が考えられます。
①年収UP
②現状維持で他の優位性を創出する
③認知度の向上
④個別スカウトの実施
それぞれの詳細とメリットは下記になります。
①年収UP:
若手の転職理由では年収アップがかなり多いことから、年収をあげることでかなり優位性を保つことができます。
②現状維持で他の優位性を創出する:
具体的に下記方法が考えられます。
1、求人票の刷新
「何ができるか」「誰と働くのか」「どうやって働くか」など環境を記載すると応募率があがります。
何歳くらいの人をターゲットに求人票を書くのかということも重要です。
ターゲットにあわせることで求人票の内容を明確にすることができます。
2、採用フローの短縮
スキルを重視しない採用をする場合、候補者が平行して受ける面接数も多くなるため、施策としては有効です。
③認知度の向上:
広告媒体による市場認知度UPだけでなく、エージェント内での認知度を向上することで紹介率をあげることも可能です。
具体的には自社採用リーフレットなどの作成・配布、エージェント向けの企業説明会などがあります。
④個別スカウトの実施:
若手、経験の浅い方の採用の場合は、個別スカウトはあまり実施されないためスピード決定に繋がる可能性が高いです。
どの選択肢を取るのかはマーケット状況や採用上で譲れないポイントはどこにあるのかによって変わってくるかと思います。
HR forecasterでマーケット状況を把握しつつ、適宜エージェントなどにご相談をして頂けると良いかと思います。
本日のまとめ
最後に、マーケットデータはコンパスと同じです。
要件定義や求人票をしっかり作成して、エージェントとも連携したにも関わらず採用がうまくいかなかった場合は、データを根拠にすることで現状の確認や何を変更したらいいのかの修正がしやすくなります。
今までなんとなくイメージで採用していたところから、データをもとに調べてから募集を開始することで、他の企業とも差をつけやすくなるのではないでしょうか。
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